緑内障は、視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気です。
進行すると、失明してしまうこともあります。
以前は、眼圧が上昇して起こる病気だと考えられていました。
しかし、眼圧が正常であっても視神経障害起こる「正常眼圧緑内障」が多いことが分かりました。
最近の日本での調査では、緑内障の過半数が正常眼圧緑内障であるという結果がでました。
現在は、眼圧の高さにかかわらず、「視神経乳頭と視野の特徴的な変化の両方もしくは、どちらかがあって、眼圧を十分に下げることで、視神経障害の改善もしくは、進行を抑えることができる病気」とされています。
目の中には、透明の液体「房水」が流れていて、栄養などを運ぶ働きをしています。
房水は、毛様体で作られて、虹彩の裏から瞳孔を通って前房へ流れます。
そして、隅角の線維柱帯を経由してシュレム管から排出されます。
房水によって眼圧は、一定に維持されています。
そのため、房水の排出が妨げられると眼圧が上昇します。
緑内障には、次の3種類があります。
先天緑内障・・・生まれつき隅角が未発達のために起こる緑内障です。
続発緑内障・・・けがや病気が原因で起こる緑内障です。
原発緑内障・・・特に原因がないのに起こる緑内障です。
そして、緑内障になるほとんどが、原発緑内障であり、2つのタイプに分けられます。
<開放隅角緑内障>
房水の排出される線維柱帯が徐々に詰まっていき、房水の流れが悪くなることで眼圧が上がり、視神経が障害されます。
「正常眼圧緑内障」も開放隅角緑内障に含まれます。
眼圧を下げることで緑内障の進行を遅らせることができるとわかっています。
そのため、治療は点眼薬を中心として眼圧を下げることが基本となります。
薬物療法を行っても効果が見られないときは、レーザー治療(レーザー線維柱帯形成術)や手術を行うこともあります。
レーザー治療(レーザー線維柱帯形成術)は、線維柱帯にレーザーを当てて房水の排出を促す治療です。
<閉塞隅角緑内障>
虹彩が隅角とくっついた状態や隅角が狭くなることで、房水の排出される部分が塞がってしまい、眼圧が上昇します。
目の構造上に問題があったりすると起こりやすいとされています。
急激に眼圧が上昇することもあり、「目に激しい痛み」「目の充血」「吐き気」などが伴います。
この症状を「急性緑内障発作」といいます。
閉塞隅角緑内障の治療は、一般的にレーザー治療(レーザー虹彩切開術)を行います。
発作のときは、薬を使用してある程度まで眼圧を下げる治療をしてから、レーザー治療を行います。
レーザー治療後、十分に眼圧が下がらない場合や、タイプによって薬物療法や手術を行うこともあります。
房水の排出を促して、眼圧を下げる薬です。
体の全身的な副作用は少ないため、緑内障の治療に主な薬として使用されています。
房水は、隅角の線維柱帯からシュレム管を通って排出されています。
他には毛様体の隙間を通って、脈絡膜や強膜経由で排出されています。
プロスタグラジン関連薬は、この経路にて房水の排出を促す作用があります。
プロスタグラジン関連薬には、「ラタノプロスト」「ウノプロストン」という薬があります。
日本で使用している薬の中でも「ラタノプロスト」は、眼圧を下げる効果が最も強い点眼薬です。
プロスタグラジン関連薬の副作用は、全身的なものは少ないです。
局所的なものとして、目とその周りに副作用が起こりやすいです。
症状としては、「目の充血」「虹彩への色素沈着」「まぶたの黒ずみ」などです。
ほかには、「角膜障害」が起こる場合もあります。
特に注意が必要なのは「角膜障害」です。
角膜障害によって、プロスタグラジン関連薬が使用できなくなることもあります。
プロスタグラジン関連薬の次に広く使用されているのが、交感神経遮断薬です。
交感神経遮断薬は、「β遮断薬(β受容体遮断薬)」と「α1遮断薬(α1受容体選択性遮断薬)」と「αβ遮断薬(αβ受容体遮断薬)」があり、それぞれの作用や副作用などについてまとめました。
<β遮断薬(β受容体遮断薬)>
β受容体への刺激を遮断して、房水が作られるのを抑える作用があります。
β受容体の2種類の両方を遮断する薬・・・「チモロール」「カルテオロール」「レボブノロール」などです。
β受容体のβ1受容体選択性の薬・・・「ベタキソロール」などです。
一般的に使用されるのは「チモロール」ですが、薬によってさまざまな特徴があるので、その特徴によって使い分けられています。
副作用は、局所的なものは少なく、全身的なものが起こることがあるので注意が必要です。
具体的な症状としては、「血圧が下がる」「脈拍が減る」「ぜんそくの発作を誘発する」などの心臓や肺に影響するものです。
そして、心不全の人はβ遮断薬の使用はできません。
気管支ぜんそくや重度の慢性閉塞性肺疾患の人は、受容体非選択性のβ遮断薬の使用はできません。
<α1遮断薬(α1受容体選択性遮断薬)>
もともとは、血圧を下げる薬ですが、眼圧を下げる効果もあります。
緑内障の治療に点眼薬で「ブナゾシン」が用いられています。
副作用も少なく安全性の高い薬です。
効果的には、強くないので他の薬と併用されています。
<αβ遮断薬(αβ受容体遮断薬)>
房水を作られるのを抑える作用と房水の排出を促進する作用を併せもつ薬です。
点眼薬の「ニプラジロール」が使用されています。
単独で使用するとチモロールと同じくらいの作用があります。
しかし、β受容体に対しての作用は受容体非選択性のβ遮断薬より弱いです。
そのため、副作用も少ないです。
ただし、ラタノプロストと併用したときの効果は、β遮断薬よりちょっと弱いとされています。
ぜんそくのある人は、使用できません。
炭酸脱水酵素阻害薬は、炭酸脱水酵素の働きを阻害する薬です。
働きを阻害することで、房水が作られるのを抑えられます。
以前使用していた「アセタゾラミド」という薬は、効果はとても強いです。
しかし、内服と注射があり、全身的に副作用が強く現れるため、原則として長期間使用することはできませんでした。
そのため、最近になって点眼薬の「ドルゾラミド」「ブリンゾラミド」などが開発されました。
眼圧を下げる効果に関しては、アセタゾラミドの内服薬ほど期待できません。
しかし、副作用が少ないこともあり、緑内障の治療には必要な薬の1つです。
ただし、使用した感じがよくないと嫌がる人もいます。
副作用の症状は次のようなものです。
内服薬の場合・・・「胃腸障害」「手足のしびれ」などです。
点眼薬の場合・・・「目にしみる」「べたべたする」「点眼直後は視界がくもる」などです。
そして、重篤な腎障害の人は使用できません。
交感神経刺激薬には「α2刺激薬(α2受容体選択性刺激薬)」と「αβ刺激薬(受容体非選択性刺激薬)」があります。
それぞれの働きや副作用などについてまとめました。
<α2刺激薬(α2受容体選択性刺激薬)>
房水を作られるのを抑える作用があります。
主に用いられる点眼薬は、「アプラクロニジン」です。
眼圧を下げる効果はとても強いです。
しかし、長期間にわたって使用することはできません。
レーザー治療後の眼圧が上昇するのを予防するためなどに、一時的に使用されます。
副作用の症状としては、「口の渇き」「頭痛」「粘膜アレルギー」などがあります。
作用の1つとして瞳孔を開くため、閉塞性隅角緑内障でレーザー虹彩切開術を受けていない人は使用できません。
<αβ刺激薬(受容体非選択性刺激薬)>
房水を作られるのを抑える作用と房水の排出を促進する作用を併せもつ薬です。
主に用いられる点眼薬は、「ジピベフリン」です。
開放隅角緑内障の治療に使われています。
一般的には、「プロスタグランジン関連薬」や「β遮断薬」などで十分な効果が得られなかったときに併用する薬です。
副作用の症状としては、「目の充血」「目への刺激感」などがあります。
閉塞性隅角緑内障の発作を起こしやすい人は使用できません。
副交感神経刺激薬は、瞳孔を縮めて隅角を広げる薬です。
シュレ管からの房水の流れ出る量が増えます。
副交感神経刺激薬の古くから使用されている点眼薬は「ピロカルピン(塩酸ピロカルピン)」などです。
副交感神経刺激薬で起こる副作用は、次のような症状があります。
1.物が暗くぼやけて見えます。
2.近視が進行します。
3.目が充血したり、涙目になります。
そして、副交感神経刺激薬は、「虹彩炎」の人は使用できません。
次に高張浸透圧薬ですが、この薬は血液中の浸透圧を上げる働きをします。
目の組織から血液中に水分が移行し、目の硝子体の容積を減少させて眼圧を下げます。
主に使用される薬は、点滴で行う「マンニトール」「グリセリン」と内服で行う「イソソルビド」などです。
緊急に眼圧を下げる必要がある手術前や閉塞隅角緑内障の発作時に使用します。
緑内障の薬の使用についていくつかQ&Aにて説明します。
1.検査で眼圧が高かったときは、緑内障の薬を必ず使用するようになりますか。
眼圧が高くても、視神経乳頭や視野に緑内障の特徴的な変化が見られないときは、必ずしも薬が必要ということではありません。
ただし、高眼圧症の場合は、緑内障の原因にもなるので、ある程度以上眼圧が高いときは、薬の使用をすすめられることがあります。
2.正常眼圧緑内障でも眼圧を下げる薬が必要ですか。
「正常眼圧緑内障」と診断されたら、眼圧が高くなくても、視神経乳頭や視野に緑内障の特徴的な変化が見られたということなので、薬を使用します。
ただし、もともと眼圧が低いような人の場合は、薬を使用しても効果が得られにくいため、一般的には様子をみるということになります。
3.点眼薬を使用すると、目に刺激感がありますが心配いらないですか。
緑内障の点眼薬の副作用の症状で多いのが、「チクチクする」「しみる」などの刺激感です。
炭酸脱水酵素阻害薬を使用した直後に一時的な刺激感があったとしても、心配いらないことが多いです。
しかし、アレルギーを起こしている可能性もあり、アレルギーを起こしているようであれば、使用を中止しなければなりません。
アレルギーの症状として「灼熱感」「目の充血」「目の縁のかぶれ」などです。
このような症状が出た場合は、担当医師に相談をしてください。
4.点眼薬を使用することで、副作用が全身に現れますか。
全身に影響を与えることがあるβ遮断薬については、注意しなければなりません。
血液中の濃度のピーク時には全身の80?90%のβ受容体を遮断するといわれているため、心臓や肺の働きにも影響がでます。
ですから、点眼薬であっても全身の副作用に注意する必要があります。
炭酸脱水酵素阻害薬は、全身の80%ほど働きが阻害されますが問題ありません。
全身の99%ほど阻害されなければ影響が出ないとされており、重篤な腎障害がある人以外は、一般的に問題はありません。
しかし、副作用の少ないプロスタグランジン関連薬でも、過敏な喘息の人で喘息の症状が現れた人がいます。
点眼薬であっても、副作用は全身に現れる可能性があると思ってください。
緑内障の薬の効果についていくつかQ&Aにて説明します。
1.毎日、点眼薬をさしていても効果が出ているのかわかりません。
緑内障の薬物療法は、高血圧の人が降圧薬を服用するのと同様です。
高血圧の人が降圧薬を服用しても高血圧が治るわけではなく、血圧を下げ、動脈硬化などを予防します。
緑内障の人の場合は、点眼薬をさしても緑内障が治るわけでなく、眼圧を下げて、視神経などの障害を遅らせるようにします。
点眼薬の効果を調べるには、眼圧を測定することでわかります。
定期的に検査をして眼圧を測定してください。
2.長期間、点眼薬を使用していると効かなくなりますか。
緑内障の点眼薬は、使用しているうちに効果が弱くなることがあります。
効果が弱くなったりしたときは、作用のしくみが違う薬を組み合わせて併用します。
3.点眼薬を多めにさすと効き目がよくなりますか。
点眼薬を多くさすとより効くだろうと思う人は多いです。
しかし、目に20ul以上さしても意味がありません。
点眼薬の1滴は40ulくらいあるので、1滴でも多いのです。
多くさしすぎると、目だけでなく体全身への副作用の影響が高くなります。
4.緑内障の人は注意と記載のある薬はすべて使用できませんか。
緑内障だからといって、全部の人が使用できないということではありません。
緑内障でも眼圧の高くない「正常眼圧緑内障」「開放隅角緑内障」の場合、多くの薬を使用することができます。
「閉塞隅角緑内障」でも、レーザー治療を受けていれば問題ない場合もあります。
ですから、市販薬や他の科から薬を処方してもらうときは、緑内障の種類や治療内容を担当した医師にしっかりと伝えることが大切です。
緑内障の点眼薬を用いた治療は、一般的に1剤で始めます。
しかし、その1剤だけでは効果が十分でなかったり、使用しているうちに効果が薄れてきたときは、ほかの点眼薬との併用をすることが多いです。
点眼薬を併用する基本としては、眼圧を下げるしくみの違う薬を組み合わせます。
点眼薬で主に最初に使用されるのが、「プロスタグランジン関連薬」です。
このプロスタグランジン関連薬は、房水の排出を促す薬です。
そして、このプロスタグランジン関連薬だけでは、効果が得られないときは、「β遮断薬」「炭酸脱水酵素阻害薬」などの房水が作り出されるのを抑える作用がある薬を加えます。
β遮断薬は、なるべく副作用のリスクが低いものを選びます。
β遮断薬が使用できない人は、炭酸脱水酵素阻害薬を使用します。
3つの薬を使用するときの代表的な組み合わせは、つぎのようなものです。
1.「プロスタグランジン関連薬」+「炭酸脱水酵素阻害薬」+「β遮断薬」という組み合わせです。
2.「プロスタグランジン関連薬」+「β遮断薬もしくは炭酸脱水酵素阻害薬」+「α1遮断薬もしくはαβ遮断薬」という組み合わせです。
点眼薬の正しいさし方は、次のとおりです。
1.点眼する目の下まぶたを指で軽く引きます。
2.1滴だけ薬をたらします。
3.薬が入ったら、そっと目を閉じます。
4.目頭を数分間、指で軽く押さえます。
その際に目から薬があふれ出た場合は、すぐにふき取ります。
目頭を押さえるのは、薬が鼻涙管へ入って、鼻粘膜から吸収されて、副作用が体全身で起こらないように防止するためです。
こうすることで、薬が与える全身への影響は、半減させられるといわれています。
ただし、β遮断薬については、影響が半減したとしても、まだ十分に注意が必要です。
そして、点眼薬を複数使用する場合は、3?5分くらい間隔をあけてからさすようにしてください。
すぐにさしてしまうと先にさした点眼薬が洗い流されてしまうからです。
<分類名>
一般名・・・製品名(50音順)でまとめました。
<副交感神経刺激薬>
塩酸ピロカルピン・・・アドソルボカルピン、サンピロなどです。
臭化ジスチグミン・・・ウブレチドなどです。
<高張浸透圧薬>
イソソルビド・・・イソバイド、メニレットなどです。
<炭酸脱水酵素阻害薬>
ブリンゾラミド・・・エイゾプトなどです。
アセタゾラミド・・・ダイアモックスなどです。
塩酸ドルゾミラド・・・トルソプトなどです。
<プロスタグランジン関連薬>
ラタノプロスト・・・キサラタンなどです。
イソプロピルウノプロストレ・・・レスキュラなどです。
<α1遮断薬>
塩酸ブナゾシン・・・デタントールなどです。
<αβ遮断薬>
ニプラジロール・・・ニプラノール、ハイパジールなどです。
塩酸ジプベフリン・・・ピバレフリン、プロゲートなどです。
<β遮断薬>
塩酸カルテオロール・・・カルテオロール、ブロキレート、ミケラン、メルカトア、リエントンなどです。
マレイン酸チモロール・・・チアブート、チマバック、チモプトール、チモレート、チモロール、ファルチモ、リズモンなどです。
塩酸ベタキソロール・・・ベタキール、ベタキソン、ベトプティックなどです。
塩酸レボブノロール・・・ミロルなどです。